自作PCのケースファンの基礎的な4つのスペックについて解説します。
ケースファンのスペックをしっかり解説しているサイトが案外見つからなかったので書きました。
今回はファンの性能部分に主眼を置いて書いたので、ケース全体のエアフローやファンの制御方式などには深く触れていません。一応以下の情報(少し古いですが)も見て頂けるとありがたいです。
目次
ファン径・厚さ
ファンの大きさを決定する要素です。
基本的に大きく厚いファンほど大風量・静音になる傾向があります。またファンが厚ければ厚いほど高静圧になる傾向があります。
よくケースに搭載可能なファン径として採用されているのは120mm、140mm、200mmの3種類です。通常のファンの厚みとしては25mmがよく採用されています。
薄型ファンとしては15mm、20mm厚のものが、厚型ファンとしては38mmのものなどがあります。
リブの有無
ファンの形状として、厚さや径の他にリブの有無も重要な選択ポイントとなります。リブの有無に関しては以下のページにて詳しく解説されています。
USED NOTE ケースファンの話 その2 リブの有り無し
ラウンドフレームファン
ラウンドフレームファンは、Cryorig XF140などのような、フレーム形状が円形に近いファンです。
ファンの径は140mmだが固定は120mmのねじ穴など、径よりも一回り小さい穴に固定する形を取っているものが多く、省スペースである性質上CPUクーラー用のファンによく採用されています。
ケースファンとしてラウンドフレームファンを選ぶ際は、ねじ穴のサイズが対応しているからといって径の大きさが合わなければケースに入らない点に注意が必要でしょう。
騒音値(dB)
ファンの出す音量を表す数値です。
この数値が意外と曲者で、出ている数値は単位がdBであることが殆どであり、ホンやラウドネスレベルといった単位ではないため、単純な「うるささ」を表してはいません。
例えば高めの音が出るファンは同じdB値でもうるさく感じたり、音質によっても動作音が不快に感じる場合があります。
基本的にファンの回転数(RPM)に比例して動作音は大きくなりますが、高品質なケースファンでは高回転数でも比較的静穏性に優れる場合もあります。回転数以外にも、ケースファンの軸の種類や質、ファン形状による風切音の違いなどによって静穏性が変わります。
静穏性を確認する際は最初に見る数値ではありますが、前述の通り意外に当てにならない数値なので、レビューなども確認しておくと良いでしょう。
高くて色がダサくてもよければ、Noctua製のファンは静穏性と風量や静圧に優れた高品質なファンだとされています。
回転数制御
騒音値以外のもう一つの目安として、ファンの回転数制御のレンジがどれだけ広いかが有ります。
ケースファンは常に最高速で運用するだけでなく、マザーボードやファンコントローラーによって、温度に合わせて速度を制御することもできます。ここで回転数をあまり下げられないファンを選んでしまうと、負荷を掛けている訳でも無いのに音が気になるという状況が発生する場合もあります。
一方高速でも低速でも動かせるファンを購入することで、必要な時には高速、そうでない時には低速に制御し、いつもは静かだが必要なときは冷却性能を発揮するようにすることも可能です。
最近では必要が無い時には完全にファンを止めてしまうセミファンレス機能に対応したファンやファンコントローラ・マザーボードも有るため、回転数制御に関してはシステム全体で考えてみても面白いでしょう。
(音に関する参考資料)
音の性質については、下記のWikipediaの項目が分かりやすいと思います。
風量・静圧
風量
CFM、m^3/hなどの単位で表される値で、よくファンのスペックに記載されています。
これは、遮るものの無い状態で(ここ重要)ファン径に対してどれだけの量の空気を流すことができるかという値です。
静圧
mmーH2Oなどの単位で表される値です。
この値はケースファンにとってかなり重要な値のはずですが、案外公表されていないことがある値です。
静圧とは閉じた空間に対してどれだけ空気を送り込むことができるかという値です。
風量と静圧の関係
風量と静圧の関係については、以下の記事が詳しく解説しています。
風量が多いからといって静圧が高いとは限らないという点は誤解されていると思います。特にケース内の気圧が高い状態(これを正圧状態と言い、ケース内に埃が入りにくくなる。対義語は負圧状態)を作ろうと思うと、採用すべきなのは高風量ではなく高静圧なファンです。ラジェーターにファンを付ける場合にも、高風量よりは高静圧なファンを選ぶ必要が有ります。
一方遮るものの少ない状態で効率良く排気したいなどの用途では高風量のファンが適しています。
要求電流
ケースファンが最大動作のために要求する電流です。
一般的なファンの利用方法では問題になる場合は殆どありませんが、大電流を要求する特殊なファンや、分岐ケーブルを利用して1つのコネクタに多くのファンを接続する場合には過電流が問題となる場合があります。
過電流はマザーボード・ファンコントローラー等を壊す場合もありますので、繋ぎたいファンの消費電力に対する機器のコネクタの供給電流量は調べる必要が有ります。もし供給可能量を超えている場合には、分岐を減らして別のコネクタと合わせる、電源に直接接続する、ファンコントローラーを導入するなどの対策があります。
また、基本的に1つのファンコネクタが供給している電流量は2Aであることが多いです。
おわりに
ケースファンの選び方としてはここで紹介した4つのスペックを基準に大体選んでいくことができると思います(騒音値は別ですが……)。
おまけ
おまけとして面白い機能を持ったファンを紹介します。
ENERMAX D.F.シリーズ
ENERMAXのD.F.シリーズのファンは、PC起動時にファンを逆回転して埃を払う、DustFreeRotation(DFR)technologyを採用したファンです。
本文中で紹介したUCDFS12Pは2017/7/8日発売のD.F.シリーズ最新(2017/7/13)の製品で、最大11.131mm-H2Oという超高静圧を実現しているファンです。
RGBファン
最近のライティングの流行に合わせて、各社からRGBで制御可能なファンが続々登場しています。
ただし、案外汎用4ピンLEDヘッダで制御できる製品が少ない点は注意が必要でしょうか。
少し前までは一色で光れば十分だったことを考えると、相当な進歩だと思います。
SilverStone SST-FG141/121
最後はファンではなくファングリルです。
以前も紹介した商品ですが、この製品の利点はライティングを考えるときにケースファンの選択肢が広がる点です。ケースファンには静圧や風量などのスペックの違いがありますが、RGB LED内蔵ファンとなると選択肢が狭くなりがちです。しかし、この製品を使うことでそういった制約を気にせずにファンを選ぶことができます。